太ると薄毛にないやすいは本当か?嘘か?
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健康ブームと呼ばれる近年では、健康にまつわる都市伝説もいろいろな形でまことしやかにささやかれることも少なくありません。
都市伝説的に語られるウワサのひとつに、「太っている人は薄毛になりやすい」という説があります。そこには、医学的に明確な根拠はありませんが、結論をいうなら、まったく無関係とも言い切れない、すなわち「太っていることと薄毛との間に因果関係は認められないものの、完全に否定できるものではない」という、少々モヤモヤした結論になります。
今回はこの都市伝説的ウワサを少し突いてみたいと思います。
まずは「薄毛の原因」を検証してみる
「太っている人が薄毛になりやすい」という命題が真であるとしたら、太っていることが「薄毛の原因」をつくっていることが必要条件になるでしょう。ですからまずは、薄毛の原因を検証してみて、そのうち太っていることがその原因をどのくらいつくっているのかという部分である程度この都市伝説の信ぴょう性のようなものを判断することはできます。
では、「薄毛の原因」は?
薄毛の原因をあげつらって、その原因の原因となっているのが「太っていること」であれば、「太っている人は薄毛になりやすいんですよ!薄毛になりたくないならダイエットしてください!」と、強気な姿勢で詰め寄ることもできるのですが、そもそも「薄毛の原因」自体が非常に多様であり、複雑怪奇なロジックに満ちています。
まずこの時点で、太っていることと薄毛になることとの因果関係を明らかにするのは難しいことであるように感じられます。ただ、これであきらめてしまっては、この方面のロジックを手がかりとした薄毛の解消のチャンスを逃してしまうことになります。もう少し掘り下げて考えてみましょう。
薄毛の具体的な原因は?
薄毛は個人差がありますので、あくまでも「一般論」としてのお話しになりますが、一般に薄毛の原因となりうるファクターは、以下の3つです。
・遺伝
・血流の悪化
・男性ホルモン(主にテストステロン)の増加
遺伝に関しては、太っていることで薄毛が遺伝しやすくなるという発想自体がまったくナンセンスなので、遺伝に関してはあまり考える必要はなさそうです。
血流の悪化に関しては、太っていることとの関係は密接です。肥満によって血糖値が上昇したりコレステロールのバランスがわるくなったりすることで、動脈硬化をはじめとする血流の悪化のリスクは極めて高くなります。ただし、太っていても、運動をする、ストレスをためないなどの生活習慣の部分でケアするなら、幾分そのリスクは軽減されます。
男性ホルモンの増加に関しては、正直微妙なところがあります。薄毛と関係が深いといわれるテストステロン、さらにはテストステロンと特殊な酵素が結合してできるDHTジヒドロテストステロンの増加が薄毛にとっての諸悪の根源とされています。
生活習慣の悪化などによって、男性ホルモンが増加したり、DHTジヒドロテストステロンが増加したりする原因となることはわかっていますが、太っていることがこれらのマイナス要素を与えることになるかどうかの検証がすでに行われたのかどうか、その真偽はわかっていません。ですから、ここでは「男性ホルモンについては因果関係なし」といちおうコメントしておきます。
ただし、生活習慣の悪化が肥満をはじめとする生活習慣の原因になることは、すでにみなさんもよく知るところかと思います。その意味では、「直接の因果関係はないけれど、相関関係までは否定できるものではない」という少々わだかまりの残る結論に至ります。
薄毛は全身疾患の余波であるという考え方
厚生労働省の判断では、薄毛によって生活に支障をきたすような、つまりは、(少し話が大きくなりますが、原理的には)憲法で保障された「幸福で最低限度の生活を送る」ことに支障をきたすことはないとされます。薄毛の検査や治療が健康保険の適用外になっているのもそういった判断が原因です。
ただし、上記の「薄毛の原因」からもわかるように、太っている、もっといえば「肥満」のレベルともなると、これは古くから知られるように、全身の問題であることがわかっています。血流の阻害が起これば、即、全身疾患のリスクを上昇させます。
一方で、その血流の阻害が薄毛の最大の原因のひとつになっているわけですから、肥満と薄毛が無関係でなかったとしても、これは驚けませんよと言わなければなりません。ただし、そこでまた新たな問題が生まれます。
「太っている」ことと「肥満」とは同じなのか、それとも別なのか・・・という難しい判断です。このコラムでは、「太っている」以上に「太りすぎている」ケースを「肥満」としてお話ししてきましたが、このあたりのニュアンスの解釈も、釈然としないところがあるかもしれませんね。
ですから、「太っていることが薄毛と関係している!」と断言してしまうと、上記のようなさまざまな障壁に引っかかってしまって、矛盾がたくさんでてきてしまうので、「太っていることと薄毛とは無関係とはいえない」という少し中途半端な結論になってしまうのです。
なかなか難しいテーマですね、この問題は・・・